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クライアントの心を引き出すのは、セラピスト。
セラピストの可能性を引き出すのが、私たちカラーキューブセラピー協会です。

ー医療実績ー <言語聴覚士による介入報告>


リハビリテーション場面におけるカラーキューブセラピーの可能性
~言語聴覚士とカラーキューブセラピストの両面から~

2010年4月28日                         
日本カラーキューブ協会 ファシリテーター
言語聴覚士   茂木 真千子

こんにちは。私は横浜の回復期の病院に勤めています。今回は「リハビリテーション場面におけるカラーキューブセラピーの可能性」と題して、リハビリテーションと先ほど立川先生が述べたカラーキューブセラピーが持つ有用性やその可能性について発表します。
リハビリテーション対象者は、受傷し大小問わず何かしらの障害や問題をかかえて病前と同様の日常生活を営むことが困難となった人々です。

リハビリテーション(rehabilitation)とは、re [再び]+habilis [適した、ふさわしい]+ation [状態にすること]であり、「再び適した状態にすること」を意味します。そのために行われる全ての援助活動がリハビリテーションなのです。そして何より大切なのは、全ての援助活動の中心である「ご本人のよくなりたいと思う気持ち」です。リハビリテーションを円滑に進めるためは、感情や精神面の安定が重要だと考えらています。不安測定の質問紙として信頼性の高いSTAI「状態-特性不安検査」などの現在臨床の場で用いられている多くは、精神状態について客観的に把握する評価法で、統計学な観点からも実証されており信頼性・妥当性があるものばかりです。

 内容は不安・気分・やる気などありますが、方法としては質問項目に答えていき点数化する形式が多数を占めています。しかし、その回答を行う際に問題の直面化を避けるなどの無意識の自己抑制が起こる場合があり、その時点で回答にはバイアス、つまり回答する事に対して自分にとって都合のいい解釈にしかならない危険性をはらんでいます。例えば、質問紙において「あなたはみじめですか?」という質問に対して、なかなか自分がみじめだなどという答えは出しにくいものです。また、「あなたは不安ですか?」という問いに対しても、漠然とした不安があったときに不安と丸をつける人もいるでしょうし、逆に眼前に迫った緊急の不安から意識をそらそうとして不安でないに丸をつけるひともいるかもしれません。質問紙法での検査はこうした心の揺らぎを捉えていくために多くの方法が考えられています。しかし、その検査にも限界があり、質問されている以外の事象については答えてもらえないこともあります。カラーキューブセラピーの中では、性格傾向ではなく、一過性で移ろいやすいその時その場の気分を明確化するものとなりますが、自分の言葉でその状態を表現してもらうことが主体となります。

 カラーキューブセラピーは十色のジュエルキューブを積み木感覚のように並べたり、積み重ねたりした上で、色に対してその時に感じたイメージを答えてもらいます。つまり問題そのものの直面化ではなく、色イメージという一見無関係なものを答えるものであるからこそ、その人の問題となっていると思われる感情や精神状態などの心の問題を「自分自身を見つめてもらう。」「自分の心の欲している感情に意識を向けてもらう。」ことをカラーキューブセラピーの方法に基づいて解釈していきます。それによって「何を求めているのか。」「何を大事にしたいのか(守っていきたいのか)。」などを見つけていくカウンセリング技法です。その解釈の上でセラピストと一緒に問題への対話を通じて、問題の解決へ至る道を探していきます。

 先に、「リハビリテーションを行う上での中心は患者ご本人です。」と述べたようにご本人のやる気(努力)なくして効果は得られません。
私見ですが、リハビリテーションは道をつくる・目標に到る道筋を示す人であり、強制的にその道を歩かせる人ではないと思います。クライアント(本人)はその道を実際に歩く人であり、たとえその道がリハビリテーションなどの医療的見地から正しいものだとしても、その本人の意思を無視して強制的に歩かせることは難しいと考えます。仮に無理やり歩かせたとしてもその効果は本人の意思で歩いた場合と比べて、非常に効果は薄いものになるだろうと思われます。

 そのため、現場では「どうしたいですか。」「希望は何ですか。」のような質問を医療従事者側が尋ねる場面が多く見られますことがあります。聞かれたクライアントは、「○○したい。」「△△でいい。」と答えておりそれがクライアントの希望(hope)として目標設定にされます。そこにはバイアスがかかり「本当の希望」でない場合、あるいはどうしたらいいのかわからない場合もあります。
言語室は元々個室でセラピストとクライアントの一対一の個人訓練の場面がほとんどです。その中で「実はね、本当は家に帰りたい。でも、家族に迷惑かかるしそうは言えない。」など本音をポロリとこぼされるクライアントもいます。そうした自分の無意識によって、あるいは周囲の状況によって「隠された」希望を聞くことで、よりその人の希望に沿った目標を立てることができ、その目標がクライアント本人の希望に沿うからこそ、その人の「やる気」が引き出せるのだと考えます。
一人の症例を通じて、「隠された」希望から新しい目標が発見できた例を紹介したいと思います。

 症例はAさん女性、68歳、主婦。現疾患、進行性核上性麻痺という嚥下や発話機能が徐々に低下していく進行性の疾患です。
 訓練開始以前は、トイレなどへの移動も自立しており食事は自力摂取可で、発話面も日常のコミュニケーションは可能な方でした。その状態から徐々に機能低下が目立つようになったため、評価・自主訓練伝達目的で、週一回1時間の訓練を行うことになりました。
 訓練の経過は初期から訓練にとても関心興味を持たれ積極的に行われ、一度だけ「歩けるようになったら、また旅行にいきたい。」と発言があったのみで、「~がしたい。」「○○に行きたい。」「○○が食べたい。」など具体的欲求もなく、施設で開催されるイベントでの外出などにも参加されることはほとんどみられませんでした。8畳ほどの広さの自室でテレビを見たり本を読んだり、三度の食事も人目にさらされることを嫌がり、部屋で過ごされることがほとんどでした。ご主人や娘さんのお話しでは、元気な頃のAさんはおいしいものを食べることがとても好きで、コーラスの会に参加されたり、演劇や美術展へ足を運ばれたりと、活動的・社交的だったそうです。私も訓練時にリハビリの励みになる目標があるといいのではないかと考え「何か気になることや、困っていることはありますか?」などの問いかけをおこないましが、返事は首を横に振るだけでした。訓練に取り組む一生懸命な姿勢とのギャップが気になり、カラーキューブセラピーを行うことにしました。
10種類のカラーキューブを見せ、「この中で、Aさんが今一番気になるのはどれですか」との質問し、1つ選択してもらいその色に対するイメージを聞くと、『瑠璃』のジュエルキューブを選択、イメージについては一言「深くて先が見えない」ポツリとつぶやかれました。

 Aさんの反応より、病気の理解はしているものの、病気の進行に伴う症状に対して見通しが出来ず不安に思っているということが推察できました。
 その後の何気ない会話の中で「Aさんこの先自分の身体どうなっていくのか、自分で出来なくなることが増えていくことが不安になったり、落ち込んじゃったりするんじゃないですか?」と声をかけるとポロポロと涙を流してうなづかれました。
そして看護師・ケアスタッフに報告すると最初は「Aさんは病気のことは知っているはず。」「今更、不安になることもないのでは?」などの意見もありましたが、時間をかけ話し合いを重ねることにより、理解を得ることができ、今一度、主治医よりAさんの病気について・また現状で「できること・できないこと」などをご本人にお話してもらうことになりました。説明を受けたすぐは今よりよくなることはないのだと、ショックを受けられたようでしたが、今の状態が明確になり自分の置かれている状況をイメージしやすくなったためか、ご主人とクラッシックのコンサートへ行ったり、娘さんとレストランでディナーを楽しむことが出来るようになりました。また、夕食だけですが食堂でお食事をされるようになりました。
最後に、病院など医療現場の中に「常にその人の『生(生きる力)』を信じ」て、向かい合っていく立場の人間がいても良いのでないかと私は思います。カラーキューブセラピーは、クライアント自身が「自分自身を見つめてもらえる。」「自分の心の欲している感情に意識を向けてもらえる。」「自分の心の声にきづいてもらえる。」セラピーだと思います。
クライアント(または家族)の希望(hope)を的確に捉えることが可能になることにより、ご本人のやる気も出てリハビリテーションに取り組む姿勢も変化が出てくるのだと信じます。

失語症者へのカラーキューブセラピーの介入の1例

2010年4月28日
日本カラーキューブ協会 ファシリテーター
言語聴覚士   茂木 真千子 

【はじめに】
今まで臨床の場(言語訓練中・自由会話中など)で、「積み木を触る」「気になる色を選ぶ」というようにカラーキューブセラピーを自然に取り入れることはありましたが、今回は「カラーキューブセラピーの体験」ということを理解したうえで、セッションに臨んでいただく一例がありました。
言語聴覚士という職業の手技と、カラーキューブセラピストとしてジュエルキューブを使用し患者さんが表に出すことが難しかった『こころの声 (希望・自分の身体状態・家族について・今後の見通しなど)』に寄り添うことにより、患者さんの思いの一部を理解できた例を報告します。

【症例】
  N・Sさん男性、48歳、B.C □  N.C □
・現病歴
クモ膜下出血後遺症
・障害名
  右片麻痺 失語症 

【経過】Nsより
 平成18年11月、クモ膜下出血を発症。病院の転院を繰り返し(3回)現在に至る。
 一年ほど前までは寝たきり状態で全身状態のも悪かった (要介護度5)が、最近変化あり、改善みられて現在に至る。
言語療法を受けたことがなく、またご本人とのコミュニケーションがなかなか取ることが難しく、ご本人のご希望や考えを引き出すことができたらとの希望ありカラーキューブセラピーを行う。

【方法・結果】
 N・Sさんが何を希望されているのかを少しでも引き出すことを目的として、ワンズセンスオブバリューを行いました。(以下並び順)

B 7 5 8 2 9 6 3 4 W

 セッションの手順説明の理解も良好、ジュエルキューブを並べる作業も問題なく行えていました。
ひとつずつ色の印象を聞いていくことは、喚語困難のため行えませんでした。
次に、「この中で、N・Sさんが今一番気になるのはどれですか?」の質問し、1つ選択してもらいその色に対するイメージを聞きました。
       ↓
6・水浅葱を選択。いろいろ思い出す。

 好きなこと ⇒ スポーツ観戦
            釣り(海)              

その後は、自由会話を行いN・Sさんの思いをお聞きしながら、言語症状を観察しました。
《言語症状》※精査は行っていないので自由会話での印象やご本人からの情報を基にしています。
・理解すること
   聴くこと・・・日常会話は大きな問題ないレベルだと思われます。テレビのニュースなどの理解も概ねできているそうです。
   読むこと・・・今回は文字理解については行っていません。新聞を読んで内容も大体は解るとご本人はおっしゃっていました。
・表現すること
   話すこと・・・簡単なやり取りは良好です。会話中に喚語困難(思ったことが言葉でスラスラと表現できない)や錯語(思ったことと違うことを言ってしまう)がみられました。ご本人も「たまに言いたいことがいえない。」「違うことを言う。」と自覚がありました。
   書くこと・・・「書くことはどうですか?」の質問に最初は拒否的でしたが、「名前を教えてください。」とお願いすると、左手で書いてくださいました(モデルなし)。
・その他
   歌「りんごの歌」を歌いました。最初は、「歌えない。」とおっしゃっていましたが私が歌いだすと
   お付き合いして歌ってくださいました。声量が小さく、息が続かない点がありましたがこまめに息継ぎをしながら最後まで歌うことが可能でした。
◎自由会話中のご本人からの質問で気になった点を上げます
  「右手は治りますか」
右手でなければ字を書くことも釣りをすることもできないと思われているようです。
  「自分の両親のことが気にかかる」
    家族経営の仕事をしていた(ご本人情報)し、自分が長男だからとおっしゃっていました。
  「どうなるのかなぁ」
    漠然とした今後の不安があるようです。
 病棟での訓練として
①自分の名前・家族の名前を書く(まずは漢字で平仮名は難しいので)   書くことの練習
その他にも日付や住所などの練習
  ②単語の呼称(名前を言う)、歌を歌う→話すことの練習
  ③腹式呼吸→呼気量を上げるための練習
  等をアドバイスさせていただきました。

  釣りがお好きとのこともあり、左手による釣り竿の操作練習も可能ならお願いしました。
《まとめ》
  N・Sさんの選択した6・水浅葱より「コミュニケーション」「人間関係の結びつき」「自分らしく生きる」「表現力」などのキーワードが思い浮かびました。
クモ膜下出血後、右片麻痺や失語症などの障害が出現しコミュニケーションが思うようにいかなくなり趣味活動も困難な状況、また、48歳という働き盛りの年齢もありこれから先、病前の自分のように戻れるのかという家庭復帰、社会復帰に対しての不安も多く抱いているようでした。
「いろいろ考えてしまうこともあると思います。出来なくなったこともたくさんあると思います。でも出来ることもまだまだ残っているんですよ。出来そうなことからやりましょう。だって書けないと思っていた名前や、歌えないと思っていた歌が歌えたんですよ。まずは一歩踏み出すことですよ。」とお話をさせていただきました。
  セッションシートと名前を書かれた紙、セッション中の発言、病棟でできそうな訓練内容などを看護師さんにご報告させていただきました。

【おわりに】
 健康な普通の状態でも、自分の気持ちを他人(自分以外の存在)に伝えることは難しい作業です。また、自分の気持ちに気づくことなく漠然とストレスや不安に感じたり、落ち込んだりすることは少なくありません。今回のケースは、失語症ということばに障害を持った方へのセッションでした。ことばに障害を持ち右片麻痺のため利き手も不自由になり「自分に何ができてこの先どうなるのか。」という不安を持たれていることが感じられました。また今回のケースは男性で48歳という若い年齢であったため、自分自身の他にご両親やご家族に対しての役割(長男として・夫として・父親として)などの不安も感じていているということが一部分ですが明らかになりました。
 失語症者の方は特に、ことばで気持ちを説明するということが難しい作業となります。そのためことばにする(伝える)ことをあきらめてしまうケースが多くみられます。今回のケースのように『カラーキューブ=色を選び自分のこころの声に気づくこと』と、『医療的な言語訓練』が自然な流れで行えることが可能であることが確認できました。

臨床の場におけるカラーキューブセラピーの介入の1例

2010年4月28日
日本カラーキューブ協会 ファシリテーター
言語聴覚士   茂木 真千子

【はじめに】
健康な私たちでも風邪など病気にかかると身体の機能低下とともに、気持ちの面でもふさぎがちになります。ましてそれが進行するものであったり、改善が難しい疾患の場合はなおさらです。自分の病気がどのようなものか説明されており、理解できているつもりでも日々変わっていく自分の身体状態に不安を抱いている方が多くその不安な気持ちを心の中で溜め込み、一人で苦しんでいる患者さんは多いように感じます。
今回は言語訓練の中でラポートを深めていく中で、患者さんが外に出せなかった気持ちをカラーキューブにより理解できた例を報告します。

【症例】
 Aさん女性、68歳、主婦。現疾患、進行性核上性麻痺。

【経過】
 一昨年まで、食事(常食)は自力摂取可。発話面も、もともと無口であったが日常のコミュニケーションも保たれていた。昨年に入り徐々に機能低下(発話の明瞭度・声量の低下、流涎の増加、嚥下時のムセ)が目立つようになる。評価・自主訓練伝達のため、週一回1時間の訓練を3ヶ月間行うことになる。
 最初の3回くらいで評価も終了し、日々行っていただく訓練を説明。訓練にもとても関心興味を持たれ積極的に行われる。その反面「~がしたい。」「○○に行きたい。」「○○が食べたい。」など欲求もなく、また、有料ホームで行われるイベントでの外出などにも参加されることはほとんどみられなかった。「何か気になることや、困っていることはありますか?」などの問いかけにも首を横に振るだけであった。
訓練に取り組む一生懸命な姿勢とのギャップが気になり、カラーキューブセラピーを行う。

【方法・結果】
  ①「この中で、Aさんが今一番気になるのはどれですか?」の質問をする。1つ選択してもらいその色に対するイメージを聞く。
  ②「もともとAさんが好きな色はどれですか?」の質問をし、同じように1つ選択してもらいイメージを聞く。
     ↓
①瑠璃を選択。:深くて先が見えない。
②撫子を選択。かわいらしい。女性。
 病気の理解はしているものの、病気の進行に伴う症状に対して見通しが出来ず不安に思っているということが推察でき、もともとは身なりにも気を配り、おしゃれでいたいということがわかった。
 その後の何気ない会話の中で「Aさんこの先自分の身体どうなっていくのか、自分で出来なくなることが増えていくことが不安になったり、落ち込んじゃったりするんじゃないですか?」と声をかけるとポロポロと涙を流される。
 看護師・ケアスタッフに報告を行いカンファレンス後、主治医よりAさんの現状で「できること・できないこと」をお話していただく。今の状態が明確になり、自分の置かれている状況をイメージしやすくなったためか、ご主人とクラッシックのコンサートへ行ったり、娘さんとレストランでディナーを楽しむことが出来るようになった。

【おわりに】
 健常な私たちでも、自分の気持ちを他人(自分以外の存在)に伝えることは難しい作業です。また、自分の気持ちに気づくことなく漠然とストレスや不安に感じたり、落ち込んだりすることは少なくありません。それが病気を抱えている方であればなおさらです
 今回のケースは、自分の病気の状態の見通しが出来ず不安に感じていているということがカラーキューブを通してご本人やご家族、Aさんに関わるスタッフに明らかになりました。今の自分の気持ちが明確にわかることばかりではない「わからない」という状況のケースもあることかと思います。(実際、健常の方でそのようなケースがありました。)しかし、それはそれで「わからない」という状態なのだということが明確になるので無理に答えを出すための負荷をかけずにすむことができます。
 ことばだけで気持ちを説明するというのはとても難しい作業なため、ことばにする(伝える)ことをあきらめてしまうことが多いのではないかと思います。今回のケースのように『カラーキューブ=色を選ぶ』ことで『気持ちを説明する』という大変な作業が自然な流れで意識することなく行えることが確認できました。




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